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賃金設計講座(3): 賞与制度について①

2014年06月19日 カテゴリ:賃金制度

執筆者:岩下 広文

人事戦略研究所 コンサルタント

大学卒業後、国内事業会社において人事・総務等の実務に従事。その後、人事アウトソーシング会社、及び、外資系大手コンサルティングファーム(※監査法人系)にて人事コンサルティング業務に従事した後、現職。人事評価・賃金制度構築や退職金制度設計だけでなく、組織・人事面における幅広いテーマでのコンサルティング経験を有する。人事の実務経験を活かした運用性の高い制度設計に定評がある。

前々回までのブログでは、月例給与である基本給と諸手当について解説してきた。今回のブログからは、臨時的な賃金である「賞与制度」について、具体的な解説していくこととする。

■ 日本企業における「賞与」の位置づけ
一般的な賞与とは、月給とは異なる臨時的な賃金として、年に数回の一定時期に一時金として支給されるものである。多くの企業では、夏と冬の年2回に分けて支給しているが、それとは別に、決算状況に応じて一時金(=決算賞与)を支給している会社もある。
会社の規模や労働組合の有無などによって、賞与の位置づけも実際には異なるが、多くの日本企業では、特に夏・冬の賞与については、よほど会社業績が悪く無い限りは、毎年慣例的に賞与の支給を行っている。従って、その意味においては、賞与は給与と同様に生活保障的な意味合いを持った賃金であると言える。
他方、特に会社側の考えとしては、賞与は業績配分的な性質を有した賃金であり、業績が悪い場合には賞与を減額もしくは無支給とすることで、柔軟な人件費コントロールを行うための優先的手段として位置付けたい、というのが本音ではなかろうか。月給を会社業績で変動(減額)させることは、たとえ労働組合の無い中小企業であっても現実的には難しいため、賞与での調整が主とならざるを得ない。
このように、日本企業における賞与の位置づけというのは、往々にして、「生活保障的」な部分と「業績配分的」な部分という二律背反的な性質を持っているというのが、実態である。これに対して、欧米などでは、明らかに後者としての位置づけ、すなわち業績配分的な位置づけになっている。いわゆる、プロフィットシェアという考え方であり、利益が出ればそれを配分するというものである。

日本企業における賞与というのは、歴史を遡れば、もともとは"盆・暮れ"に出費が重なることへの補助であり、それ故に支給時季が"夏・冬(年末)"になっているというのが通説である。このように、日本の場合には、賞与の支給背景として文化的な側面も強いため、今後も生活保障的な要素を完全に取り除くのは難しいと考えられる。
従って、一般的な日本企業において賃金制度の見直しを行う場合には、年2回の賞与支給を前提とした上で、毎月の給与水準を設定することが必要になってくる。言い換えれば、給与と賞与のバランス決めが、労使双方にとっての重要テーマとなる。

かつて成果主義が流行った頃に、その手段として年俸制を導入する企業が増えたものの、現時点で年俸制が賃金制度の主流になっているかと言えば、決してそのようなことはない。また、年俸制を謳いながらも、実質はこれまで通り給与と賞与に分割して支給しているという企業も少なくない。このような実態からも、日本企業における賞与の位置づけというものが、欧米とは大きく異なるということが容易に理解できる。

次回(以降)のブログでは、賞与制度の具体的な設計ポイントや留意点などについて、解説をしていきたいと思う。

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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。