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会社を守る就業規則見直しのポイント(2)採用時提出書類の一工夫

2011年09月26日 カテゴリ:労務関連

執筆者:森中 謙介

人事戦略研究所 コンサルタント

大学院では会社法務・労働法務を中心とした法律学の研究に従事。新経営サービス入社後は、主に中堅・中小企業を対象とした人事評価・賃金制度構築のコンサルティングを行なう。労務管理の分野にも精通し、最近では「残業削減」をテーマにしたセミナーや雑誌記事の執筆「改正労基法への実務対応①~④(人事マネジメント誌)」など、精力的に活動している。

入・退社時は労務トラブルの危険が満載!

入・退社時は比較的労務トラブルが発生しやすい時期と言えます。特に入社時はまだお互いのことを分かっておらず、信頼関係も築けていない状態ですので、ちょっとした誤解でもトラブルに繋がる危険性があります。

例えばこんなケースはどうでしょうか。Aさんはうつ病の病歴があったが、その事実を隠して入社したところ、入社後2ヶ月でうつ病を発症して(厳密には再発し)入・退院を繰り返すようになった、このような場合です。当然会社としては入社時にそのような病歴があったのであれば採用しなかったとして解雇処置をとりましたが、Aさんは入社時には既に治っていたと思ったので言わなかったのだと反論、やれ解雇権の濫用だとトラブルへと発展しました。さて、防ぎ用はなかったでしょうか。

「採用時提出書類」の一工夫で労務トラブルを回避する

就業規則の中で、入社時提出書類に「健康診断書」による病歴の申告を義務付けている会社は多いと思いますが、誰しも既往症の欄に「うつ病」とは書きにくいもので、実際には入社後発覚するケースが多いでしょう。試用期間中の発覚であればそれを理由に本採用拒否という方法もあるでしょうが、本採用後となるとややこしくなります。ここで、採用時の提出書類に一工夫を行います。
例えば、「うつ病など既往症の発覚により、採用後業務の遂行に支障が生じたときは労働契約を解約できる」旨の念書を交わすといったことが考えられます。この念書自体の法的効力を断言することはできませんが、虚偽の申告があったであるとか、後々解雇の必要性が出てきた際の材料にはなりえます。

採用時の提出書類に一工夫を行うことによって、トラブルを未然に防ぐことが可能になります。上記もその一例です。他には「運転免許証の写し」なども提出を求めておくとよいでしょう。業務で運転を行う場合は当然のこと、しない場合でも同様です。仮に社員が無免許運転で事故を起こしたと場合、重大な会社責任を問われる可能性もゼロではありません。ちょっとした一工夫で防げるリスクが、意外と多くあることに改めて気付かされる事案です。
もっとも、過敏になりすぎて何でもかんでも提出を求めるのも考えものです。手間も増えますし、ともするとプライバシーの問題と絡んで入社希望者の不信に繋がることもありえます。自社の業種・業態や風土などを勘案した上で必要な書類をピックアップしていただきたいと思います。

「書類の提出拒否」を理由に採用を取り消すことは法律上可能?

最後に法律上の問題として、会社が採用時に求める提出書類の提出を社員が拒否した場合に採用拒否が出来るのか、といったことが会社側としては気になる部分かと思います。
内定でも労働契約は成立していることから、会社側からの一方的な取消しは「解雇」に該当し、「解雇」であるからには「客観的に合理的な理由」があり、その解雇が「社会通念上相当」と認められる必要があります(労働契約法第16条参照)。
この点、書類提出に絡んで採用取消しの有効性が判断された裁判例がいくつかあります。その中で考慮されているのは、

1. 会社が提出を要求した書類が、採用後の業務遂行や諸手続(社会保険手続等)を行うにあたり、必要性の高い書類であるか
2. 書類の不提出によって、労働関係に重大な支障が生じるかどうか
3. 書類の提出が採用の条件とされているか

といった内容です。参考にしていただければと思います(今回紹介した「うつ病に係る念書」や「運転免許証」の提出拒否で採用取消しが認められるかどうかを断言することはできません)。筆者個人としては、(争いありきで対策を打つのではなく)まずは会社として提出を求める書類についてはその必要性や利用目的などを入社前に本人によく説明し、理解と納得を得た上で提出してもらえる状態を作ることが、会社を守る上で本質的に重要なことではないかと考えています。

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